<2003年総括企画>
一年の走りを振り返る
第一夜  冬の探索


 2003年は、一体どれだけの轍を刻んだのだろう。
年の最後に、その軌跡を振り返る。

またこれは、「山さ行がねが」の、来年前半のネタを占う上でも重要なヒントとなる。
通常、探索からレポート化までは、数ヶ月の時間を要する。
結局レポート化されない(=お蔵入り)ネタも少なくないのだが、その大元である探索の全容を知れば、
来年の「山さ行がねが」をもっとお楽しみいただけるだろう。

なお、写真にカーソルを合わせると、ポップアップに説明文が表示されます。



 2月6日、笹立隧道が、2003年はじめての山チャリだった。
今年の、これまでに無いほどの山チャリラッシュは、すでにこの初回の時点で予感されていた。
というのも、2月といえば、通年で最も山チャリに適さない、寒くて、積雪の多い時期だ。
その真っ最中に、遥か山形県の沿岸部を、延々100km以上に亘り走行したのである。
このような、出発自体が暴挙といえるような時期の山チャリは、相互リンク先『ORRの道路調査報告書』の開設に影響された部分も、 今だから言うが、少なくない。
主幹である「へなり氏」の発言やネット上での積極的な活動は、このあと年を通じて、私に影響を与え続けたのである。

 またこの旅は、その特異な時期だけでなく、内容においても、その後の私の行動に大きな影響を与えている。
それは言うまでもなく、旅のタイトルともなった < 笹立隧道 > の踏破である。
“埋没しかけている隧道にもぐりこみ、地底湖に体を濡らしながらその最深部を求める。”
現在の「山さ行がねが」の人気を支える(12月実施人気投票より)このスタイルは、この笹立隧道が、最初である。
 アイスバーンと化した国道7号線温海町付近を走行中、ただ走っていただけなのに職務質問を受けたのは、チャリで駆ける私の姿が、よほど異様だったのだろうか?


 2月21日、雪中仁別
なんと2月には、さらにもう一度走っていた。
仁別という自宅から最も近い本格的山岳地帯を、当然のごとく腰丈ほどに積もった雪と戦いながら走った、ミニ山チャリである。
特に、これまで地元でありながら決して目にすることのなかった、冬季の仁別の姿は、印象深い。
その行程の一部はまったく除雪されておらず、そこは完全担ぎ・押しの苦行そのもの。
凍れる大地に昇る朝日の輝きは、鮮烈だった。



 3月6日、まだまだ雪に閉ざされた北の地から、少しでも離れようとするかのごとく、深夜秋田県本荘市をを発った私は夜通し走り山形県鶴岡市へ、そしてさらに沿岸をひた走り、人生初の新潟県入りを果たす。
そのまま南下を続け、目的地< 笹川流れ >を堪能したのが、その名も笹川流れ
本荘から村上までの、200kmを超える今年最大級のロングランとなった。

沿岸部ともなれば、意外なほど雪も少なく、すでに春の景色となっており探索は順調だった。
しかし、ひとたび山間へと数キロ分け入れば、もうそこは、写真の如き豪雪の世界である。
この日、旧鬼坂峠では手痛い撤退を余儀なくされた。



 まだ、雪の中の探索は続いた。
1週間後の3月13日、男鹿周回
時計回りに男鹿半島を周回したこの旅は、コース取りこそ平凡だったが、真冬の男鹿の荒涼たる海岸線は、それ自体が刺激的な山チャリの舞台である。
観光道路として名の知られた大桟橋道路も、冬季は細々と地元住民に利用されるだけとなり、全く異なる顔を見せる。
しかし、路面の凍結はおぞましいほどで、正気があるなら、とてもチャリでは走れない。



 ようやく春の息吹が感じられ始めた3月20日、今年最後の海岸沿いの山チャリ、西津軽海岸
深浦を発ち、国道101号線を辿り能代市に至るまでの、中距離山チャリであった。
津軽海岸の独特の愁いを含んだ景色は、まだ見ぬ北の大陸を、私に連想させる。

この旅の僅か10日後には、かつて共に走った仲間が就職のため、津軽へと旅立っていった。





 3月28日、すっかり街から雪は消えていた。
製油軌道隧道
この日、遂に発見した< 黒川製油軌道隧道 >は、その末期的な崩落ぶりと、洞内に残る熊の足跡など、2003年最恐の呼び声も高い。

そして、秋田市内に残るもう一つの「製油軌道隧道」である< 道川製油軌道隧道 >は、やはり閉塞と水没に泣かされた、これもまた不気味な洞穴であった。

この辺りから、いよいよ“廃”隧道色が濃くなってくる。
地元の人でもあまり知らないようなマニアックな探索の機会は、やはり地元の方からの情報提供によるものであった。
これ以降、旅の目的地は「未知の領域…県外など遠方」と、「新情報による掘り出し…県下近縁」という風に、二極化が進んでいった。


こうして、6本の山チャリをもって、3月までの「冬の探索」は終了した。
例年だと、3月末より活動を開始するのが専らだったので、今年が以下に早い始動だったのか、お分かりいただけただろう。
続いて、いよいよ内陸にも目を向ける時が来た。
4月からの、「春の探索」を、次回紹介しよう。


第二夜 春の探索 へ


2003.12.27