道路レポート  
秋田県一般県道102号 大館鷹巣線  その1
2004.4.24



 秋田県にある県道のなかで、3桁のものは102番から始まる。
そして、二桁のものは主要地方道に充てられているので、この県道102号線が秋田県の一般県道では最も若い番号の路線と言うことになる。
路線名は、大館鷹巣線。
県内第二の規模を誇る大館市から、北秋田郡の中心地である鷹巣町までを繋ぐ全長18054mが、昭和34年に指定されている。
途中に特に経由地といえるような人口稠密地もなく、大館市と鷹巣町の間にどっしり構える摩当山(標高444m)を越えるだけの、比較的単純な道程だが、平成14年現在でも1.4kmの通行不能区間が指定されている。

たかだか400m強の山を突破できずにいる、不甲斐ない県道の現状をレポートする。


鷹巣町 元町〜田沢
2004.4.21 11:58


 鷹巣町の中心地であるJR奥羽本線鷹ノ巣駅の一帯はかなりのにぎわいを見せており、古くから北秋田郡の中心地として栄えてきただけのことはある。
問題の県道102号線も、このにぎわいの中に始まる。
主要地方道24号鷹巣川井堂川線から左折の青看が設置されており、この交差点が終点と言うことになっている。

青看に示された行き先は、「国道105号線 森吉」となっており、路線名から当然期待されるはずの「大館」の文字はない。


 県道102号線に入っても、500mほどは商店街が続いている。
買い物客や納入業者などの車が往来し、歩いている人も多い、(写真は…そうでもないが)生きた道である。
こんなに元気な商店街は、むしろ県都秋田市にも少なくなってしまった。


商店街がとぎれると、すぐに周りは水田が目立ち始める。
それでも、ロードサイドの大型店やコンビニなどが軒を連ねている。
そして、終点から(ややこしいが、今回は“終点”から辿っている)1.5kmほどで国道105号線との十字路にさしかかる。
早速にして、初めにあった青看の目的地に辿り着いてしまった訳だが、ここの青看には直進の行き先として新たに「摩当」が示されている。
やはり、大館と言う文字はない。
いや、左折にはその文字があるのだが…。そっちは国道7号線経由である。



 国道105号線を突っ切ると、今度は栄橋で米代川を渡る。
平成10年に架け替えられたばかりの立派な橋である。
対岸に見えているのが摩当の集落であり、左奥のゆったりとした山が摩当山である。


 摩当の起伏ある集落内の道は、ごく最近に改良工事を受けたらしく、非常に快適なものであった。
だが、集落の端で李岱方面への分岐点を迎えると同時に、旧来の1車線の舗装路になった。
なお、県によれば、平成16年度もこのさき580m区間の改築が予定されているようである。

こうして、長閑な1車線となった県道は、田沢川を左手に見つつ、目下、田沢集落を目指すことになる。


 田沢地区に入ると、水田の他に畜舎が目立つ。
県道は、相変わらず1車線のままだが、自動車の往来もなく、ほっかぶり姿のおばあちゃんのチャリを追い越したりする程度だ。
典型的な農村の午後の景色である。
一応、1キロごとに黄色いキロポスト(秋田県オリジナルデザインのやつだ)が設置されており、県道であることを主張している。
15・14・13…と、キロは順調にカウントダウンされている。



 長らくフリー乗車区間が続いて来たバスも、この田沢が終点である。
ややきつさを増した勾配が、いよいよ里の終わりを予感させる。
ずっと1車線だった道は、集落内に入り余計に狭くなったように思える。


 ある意味「通行不能宣言」ともとれるのが、この冬季通行止の看板に示された通行止区間の表示である。

起点も終点も同じ地名(ココだ)になっている。
峠を前にこんな表示があると言うことは、すなわち、「大館市には続いていないよ」ということだ。
幸い、今年は少雪だったので、この程度の標高では雪に苦しめられる心配は無さそうだ。
思う存分、終点を見てやろうじゃないか!

俄然、燃えてくる私なのだった。



田沢地区
12:31


 一番奥の民家の奥で、あっけなく舗装は尽きた。
ここまで、終点から約7kmだ。
いよいよ、路線中唯一の山間区間にして不能区間へと突き進む。

確かに砂利道ではあるが、ダンプの往来がある。
しかしそれは県道とは関係なくて、建設中の砂防ダムへと向かっていった。
写真で、少し先から左へ曲がっていく道が建設中の砂防ダムに通じているようだ。
急勾配のせいか、あっちは舗装路だった…。


 さらに100mばかり進むと、一本の砂利道が県道とぶつかる。
これは、広域基幹林道である大摩当林道であり、本県道が摩当山を東西に縦断する路線だとすれば、大摩当線は南北に横断する路線といえる。
国道7号線の田代町早口から国道285号線の鷹巣町四渡までを繋ぐ17km余りのオール砂利林道である。

ちなみに、このサイトの常連さんなら間違わないと思うけど…県道は右。
写真の右の道が、県道です。
このくらいでは、皆様はきっと驚きもしないことでしょう。

私は、歓びと不安が強烈に押し寄せてくるのを感じていました。



 杉林に視界が遮られると、ますます怪しくなってきた県道の道。
まだ、左上方には、さっき分かれていった林道が見えている。
力のない轍がヒョロヒョロと続く道には、さっきまで順調にカウントダウンを続けていたキロポストも「12」を最後に現れていない。



 思っていたよりも田沢川の形成する沢筋は深くまで広くて、休耕地や荒れ地も目立つ水田の間を縫って、畦道同然の県道が続く。
当然のように、通り抜けてくる車はない。
標識も、看板も何もない。
何処が、県道大館鷹巣線なのか、もう分からない世界だ。

さすがに、全く道など峠区間にはないのではないかという不安が、高まってきた。
不通区間とはいっても、何かしら道の痕跡もないのであれば、没ネタ決定だ…。


 非常に緩やかには高度を上げつつも、まだ田沢川源流の沢筋から離れる気配はない。
本当に、山越えするのか??





 砂利道となってから約1.5kmほど来た。
  川の流は尽きて、いよいよこれ以上沢も続いていなさそうな景色になった。
だが、何となく不自然な道だ。
違和感がある。

なんだ?


…妙に、 幅が広い?


 そして、小さな公園ほどの広さの広場を最後に、轍は消えた。
ここが終点なのか。
少なくとも、現在、自動車の往来があるのはここまでらしい。
手持ちの地図では、大体この辺りから尾根へと登っていく点線の道(歩道)が描かれており、これが県道である可能性に期待していたが、それはこの現地の状況から見ると、作業道のようにも思える。
写真では黄色い看板の立っている裏の道がそれっぽい。
確かに、まだ轍が残っているようだが、峠を越えられるようには感じられない。

むしろ、私が強烈に惹かれるのは…。
左に続く、明らかに人工的な法面だ。
この掘り割りは、道の跡に違いない。

 車道の終点を振り返る。
僅かしか集落から離れていないが、もう別世界だ。

チャリを転がすと、
おもむろに大口を開けて、そのまま天に顔を向け、ふらふらと、まるでゾンビのように歩いてみた。
これが、意外に気持ちが良いのだ。
首の周りも、顔面も、緊張がほぐされる。
全身の疲れが足を伝って大地へと抜けていくような快感だ。
日光のまぶしさが嬉しい。


なぜこんなところでそんなことをしているかと言えば、

人前でやると、絶対に怪しいから。


 私は感じた、この掘り割りが将来の県道なのではないか。
この規格、明らかに林道などではない気がする。
まして、農道や作業道はあり得ない。
手持ちの地図には描かれていない道が、ここに存在しているのだろうか?
だとすると、これは面白いことになってきた。

もしこれが未成の県道だとしても、この様子ではどうせすぐに行き止まるだろうとの考えのもと、侵入してみることにした。

再びチャリに跨り、轍のない枯れ草のジュータンに進み出る。



その2へ

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