矢櫃沢のねじれ穴  前編
霊験あらたか?神秘の隧道
秋田県秋田市太平 
 当サイトが縁で出会った仲間の一人に、パタリンという人物がいる。
気さくな彼からは、有益な情報がたくさん情報がもたらされて来た。
今夏遂に発見となった「道川製油軌道隧道」についても、なんとその一年も前より彼の口からは「あそこにはまだヨッキの知らない隧道が二本あると思うよ。」と、思わせぶりな発言があった。(失礼ながら、その時には信じられなかった。)
そして、その後もことあるごとに情報を提供していただいたが、遂に、私を異常に駆り立てる隧道情報がもたらされた。

(前略)
 太平山 金山滝の右の沢奥に 手彫り隋道の情報あり。
アクセスは登山道入り口より右の沢のさらに右の尾根越えだそうです。 (後略)

 金山滝といえば、これまた秋田市をねぐらに走る者にとっては、お馴染みの地名だ。
現在では県道太平山八田線の終点で、古くからある太平山登山道の一つ木曽石口の起点である。
今回もたらされた情報によれば、登山道からも外れた山中に、手掘りの隧道が存在するという。

さらに、今回の情報は特殊であった。
なんと、このメールを頂いたわずか2日後、彼が私の働く店に現れたのである。
そこで、仕事に追われる私の手を止めさせるに十分な衝撃事実が、彼の口から語られたのである。

彼は、私にメールをした後に、自分で探索しに行ったという。
そして、正味3箇所の穴を発見したというではないか。
さらに、現地はかなりの危険箇所であるという。
沢歩き経験豊富な彼がそういうのだ…、はたして、私に攻略出来るのか…。
一抹の不安はあったが、これは自身の目で確認せねばなるまいと、次の休みに朝一直行したのである。

いざ、金山滝へ。



 
 金山滝傍の車道終点に到着したのは、9時45分のことだった。
歴史ある登山道と言っても、近年ではもっと距離の短い旭又コースなどの人気に押され、訪れる人はまばらだ。
まして、平日ともなれば、案の定先客の姿は無い。
もっとも、私は登山道(写真左の道)ではなく、パタリン氏の情報に従って、正面の東屋の裏手へすすむ。
もちろん、地図には無い道だ。
当然、チャリはここにおいていく。




 東屋の裏手に立つと、すぐ上流に大きな砂防ダムが見える。
これが矢櫃沢で、向かうのは、このさらに上流だ。
右手の急な斜面には、微かだが踏跡があり、それに従って慎重にダムを超える。




 矢櫃沢の水量は思った以上に少なく、左手に深く抉れた沢は広いが、水流はその中央部にちょろちょろとあるだけだ。
あとは落ち葉が堆積した泥の川原になっている。
道は沢底から10mほど上部につけられており、砂防ダムを過ぎてからは幅もひろくなり、かつては車道だったのではないかと思えるほどだ。
ちなみに、地図にも無い道なので当然だが、通行量は皆無のようで、夏場は通行がさらに難しくなるだろう。



 と思ったら、道は車道になった。
どうやら、金山滝林道から分岐している作業道の終点にたどり着いたらしい。
この作業道は通ったことが無いが、位置的にそれ以外は考えにくい。
ちょうど車道の終点は小さな広場になっており、周りの薄暗い植林地には大量の不法投棄物が散乱していた。
こういうのを見ると、ムカつく!

で、ここまでの道は教えてもらったとおりだ。
とすれば、このまま車道を歩いていっては目的地を失うらしいので、聞いた通りに植林地に降りてみた。



 少し迷ったが、矢櫃沢沿いから離れない様に気をつけて進路を選んだ。
すると、ここで90度進路を変える矢櫃沢の斜面が、行く手に見えてきた。
どうやら正しい道を見つけたようだ。

先へ進む。


 左手には、相変わらず水量が少ない矢櫃沢の平坦な谷底。
しかし、両岸は執拗に切り立っており、これならば沢底を歩いた方が、楽そうだ。
だが、今回は隧道とそこへのアプローチ道路を探すため、敢えて斜面を慎重に進む。
深い笹薮を足がかり手がかりにして、滑落を免れた。
なかなか道らしき物に出会えず、焦る。

 だが、ジャスト10時、谷底から20mほど高い位置に、確かに道の跡らしき痕跡を発見した。
幅は1mも無いが、人工的に斜面を切り開いた形跡がある。
しかし廃道となって久しいことは明らかだ。
数日前に先客が来ているのは間違いないのであるが、その痕跡も降り積もった落ち葉に隠され見つけられない。
この地形…、そそるのだが、と同時にかなりの危険を覚悟せねばならないようだ。




 道は土っぽい断崖の中腹を沢底と平行に突き進む。
アップダウンは不思議なほどなく、森林軌道跡とも疑われたが、付近にそれらが存在していたという話は無い。
それでも、ただの登山道にしては、不可思議な道ではある。

崩れやすい土の崖は、いたるところで決壊し、元々広くは無い道幅を三分の一以下にしている箇所が目立つ。
滑落の危険は少なくないが、土の斜面ということと、眼下の沢底に水が殆ど無いことなどなどから、恐怖感は比較的薄い。
もっとも、高所恐怖症の人にはオススメできない。



 さらに進むこと数百メートル。
金山滝入り口からは、1kmくらいは離れただろうか。
いよいよ沢筋は深さを増し、その両岸の崖も直角に近づいてきた。
すぐ前方には鋭いV字峡のような地形が見えており、あそこを迂回する手立てはあるのだろうか?
ちょっと、道が続いている気配が感じられないのだが…。




 道が無いと思われた斜面のすぐ手前では、致命的に路肩が削れている箇所が断続的に続いた。
先人いわく、この箇所は一旦道を諦め上部へ巻いたほうが良いと忠告してくれたが、素人考えの私らしく、崖にかじりついてそのまま突き進んだ。
一応書くけど、落ちても死なないと思ったから実践しているのであって、命は粗末にしていませんよ…念のため。
もちろんオススメしません。

で、その先に現れたのは、一際大きな人工的な開削の気配…。

も もしや。






 また新しい隧道が、私の住む秋田市に発見されてしまった。

「小又大滝の謎の隧道」に引き続き、サイトをご覧頂いた方のご協力で発見された隧道だ。
地図にも無いこんな穴、知らないままに死んでいっても文句は言えなかっただろうから、喜びもひとしおである。

それにしても、小さい。
その小ささといえば、私が立って入れないほどだ。
そして、狭い。
内部は分らないが、この穴に入るのは…ちょっと…勘弁。
先人の話では、入り口から少し入ると広くなっていて、そこで行き止まりというが。
はいらないと、やっぱ、駄目?

思わず音を上げたくなる異様なたたずまいだ。
敢えて形容するなら、坑道の入り口ですか。
って、まさか、マジもんだったりして??


根性試しのねじれ隧道、次回決死の侵入!







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2003.11.29