その29旧 秋田大橋2003.6撮影
秋田県秋田市



 当サイトで秋田大橋を取り上げるのは、これで二度目である。
一度目は、2002年2月に走行し、3月に橋梁レポートとして採り上げている。
この橋の詳細は前レポートをご覧頂きたいのだが、今回、この橋に大きな変化があったので再び紹介する。






 昭和9年竣工の秋田大橋は、平成12年に架け替えられるまでの65年に亘り国道7号線にあり環日本海交通を支え続けてきた。
使命を終えた旧秋田大橋は取り壊しが決定していたが、平成13年度中は現存しているのをこの目で確認していた。
前回のレポートも、通行止めとなった橋に無理やり進入しはしたが、まだ現役当時の姿のままあったからこその物であった。
同橋は廃止を惜しんでの写真展が開かれるほどに地域に愛されていた、ゆえに、「よもや…」という淡い期待を抱かせるに十分な長い放置であった。

だが、2003年6月、半年振りに来て見ると…。
すっかり、消滅しているではないか。
写真は、茨島側の袂である。
以前は、現橋の手前、ちょうど河川名の看板が立つ辺りに、旧橋があった。

 なんと、終わってみれば、あっさりである。





 残ってるぅ!

なんと、川の真ん中付近からニョキッと始まる橋があるではないかッ!
あのクリーム色のトラス、間違いない。
旧橋の姿である。

しかし、威容を誇った6連のトラスが、三つを残し消滅している。
滅多に見られない光景に、思わず全身にアツイ何かが漲った。




 撤去された部分には全く橋台の痕跡も残さず、綺麗さっぱり消えている。
こうして見ると、大きな橋だと思っていたが、実際はずいぶん細かったのかもしれない。
さらに近づいてみる。




 これぞ、今しか見られない貴重なショットである。
思っていた以上に薄っぺらだった橋。
この上に、65年間に亘り、延べ1億台以上の自動車が行き来したのだから、驚きである。
ただ、上部構造はいかにも貧弱だが、橋桁だけは今でも十分通用しそうな立派な代物である。
なんといっても、秋田県随一の大河の河口にあるのだから、そこに要求される耐圧力たるや、想像を絶する。
寸断され無残な切り口を曝け出している多数のパイプは、在りし日には橋と共に秋田市民のライフラインを担ってきたのであろう。
何もかもが、役目を終えている。





 これが断面である。
本当に薄っぺらだ。
舗装も薄い。
後から付け足された物と思っていた歩道部分も、見た限り一体的な構造のようである。




 みなさん、どうぞこの光景でお好きな想像をなさってください。
いろんな想像の広がる景色ではありませんか。





 見ていて飽きない景色である。
もっとも、色々な角度から写真に収めようと、風の強い橋の上を行ったり来たりしている私の姿は、ドライバーの皆さんから見れば、怪しかったかもしれない。





 対岸である新屋側の袂。
こちら側は、去年と変わらぬ景色。
ちょうど解体工事もこの日(平日だった)はお休みなのか、動く物は橋上に何も無かった。
どうも、暫く工事はお休みしているような気配であったが、何故このような状態でストップしているのかは謎である。
廃もの大好きの私としても、この状態は好奇の目で見るには良いが、以前「お疲れ様でした」と万感込めてお別れした身としては、悲しいのである。
はやく、安らかに眠らせてあげてよ、みたいな。

ほんと、どうなるんでしょう。
ただ、一ヵ月後には完全に消えているかもしれない橋であり、まだお別れを済ませていない方は、ぜひ、お早めに。






 大橋があれば、「小橋」も欠かせないわけで、全県的にも珍しい「小橋」の今もお伝えしましょう。
といっても、こっちは廃止された当時のまま、変化はありませんでした。
以前に比べ、雄物川側の袂の工事の影響でアクセス性は落ちていますが、微々たる物です。
むしろ、わざわざアクセスしてくる奇特な人もなさそうなほど、廃と言うには中途半端な、現役用地利用です…。





 だが、一点だけ大きな変貌を遂げていました。
それは、以前心霊写真もどきが撮影されている、小橋の下の空間です。
なんと、この一年の間にすっかりと歩道として整備されておりました。
もっとも、河川敷と工業地帯が周辺の主であり、あまり歩く人がいるようにも見えませんが、きっとそれでも朝夕は犬の散歩などに利用されていることでしょう。
この空間も、かつては羽越本線の牛島駅付近から分岐していた工業用の貨物支線が通う為のものでしたが、廃線となって久しく叢に覆われていました。
“廃”死があれば、再生があるという生命の理を、こんなボロ橋で見ることになろうとは…、無理やり感動してしまいましょう。
今回は、これでオチですから。
…インパクトなしですいません。

実は此の先の廃線後も探索してみたかったのですが、殆ど全て大工場の社有地であり、というか敷地内であり、踏み込めませんでした。
踏み込もうとしたら、睨まれました。
こっそり忍び込みましたが、結局大きな発見なく、脱出しました。





2003.6.18作成
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