中央自動車道 旧道  中編

所在地 山梨県上野原市 
公開日 2008. 1.13
探索日 2007. 1. 3

 廃道になったのは、高速だけじゃなかった?!

 新高速の廃暗渠


2008/1/3 10:46 

 全長1.5kmに及ぶ、中央自動車道の廃道区間。
平成13年に線形改良及び拡幅を達成した現道が隣に開通し、それによって使われなくなった部分である。
しかし、廃止後も完全に放置されてきたわけではなく、一般道との接続部分が新たに整備されていた。
だが、なぜか入口には工事中の柵が建てられ、ゲートも締まっている。

これより、廃高速道路の現状をリサーチする。



 閉ざされたゲートの先。
かつて時速100kmで車が行き来していた、その同じ路盤の上に立つ。
しかし、当初4車線あった道の上り線2車線分に新たな舗装が敷かれ、これを中心として“新たな交差点”も出来上がっていた。

 まずは、左折してみる。




 左折するとすぐに右に直角に折れ、そして下りはじめる。
この場所は、現道と旧道の高速に挟まれた僅かなスペースである。そこを下っていくのである。
これも高速の付け替えに伴って整備された付帯路なのだろうが、全く利用されておらず、舗装も白線も虚しく枯れ藪の底に消えている。
もう数年もすれば、完全に藪化してしまうのではないか。

 早速現れた廃然たる光景に雀躍として、チャリもろとも下って行く。




 すぐに下りは終わり、行き止まる。

いや。
行き止まりではなかった。
そこは十字路で、左右にそれぞれ新旧高速を潜る暗渠(トンネル)が、前方には階段がある。
さらに、階段の上には青空をバックに赤い鳥居が見えている。
なんだか、意外な光景だ。

 この場所もかつて工事用バリケードで塞がれていた痕跡があるが、なぜか中央部が破壊されていた。
おそらくは風のしわざであろう。




左(現道下)

中(神社へ)
※これでも現役施設です!

右(旧道下)
※これでも現役施設です!

 左右の暗渠には、共に「相模湖16」のプレートが取り付けられている。
高速道路の暗渠でお馴染みのものだ。

 それでは、再び左折してみる。
その先には、現道の暗渠が待つ。



 入口にも簡易なバリケードが。

あっちもこっちも、至る所が閉鎖されている感じがする。

なお、新旧の暗渠のサイズは大きく異なり、「旧」はちょっと車では通行が困難なほど狭い。
一方で、「新」は十分なサイズがある。それに、車線数が多い分だけ長い。
すぐ頭上を絶えず車が疾走しており、騒音はかなりのものだ。




 暗渠内部はかなりの上り坂で、そこには粒の大きな砂利が敷かれている。
側溝の蓋が一段高くなっており、本来は舗装する作りになっている。
その意味で、この道は未完成といえる。

殺風景すぎる暗がりを進んでいくと、そこには地図を裏切る意外な結果が待っていた。




 は?

 何のための暗渠ですか?!


 こにも行けない?!





 いや。

一応道はあった。

行き止まりではなく、左側にこんな“隙間”が…。


 …でも車は通れないぞ。





 で、この隙間を行くと、結局地上へ戻ることが出来た。

しかし、そこは藪のただ中で、まだか細い踏み跡がどこかへと続いてはいるものの、地図に記載のある道が現存しない。





 引き返し、今度は旧「相模湖16」へ入る。
下りなのであっと言う間に通り抜けると、出た先はまたT字路。
しかし、右へ行く道はバリケードに封鎖されている。
そこから少し離れて屋敷が見える。
昭和44年の高速開通以来、昼夜なく悩まされた騒音が少しだが遠くへ行き、いまは安堵しているかも知れない。




 バリケードの隙間から右折して、真新しい舗装路を登っていくと、案の定、最初の十字路へと戻ってきた。




 この地図通りに一周してきたことになる。

随所にバリケードが設置されており、都合三箇所も越えねばならなかったが、こうやってその位置を地図に落としてみると、バリケードがどのような“意志”に従って置かれていたのかが見えてくる。
すなわち、先ほど鳥居が見えていた、あの神社への参道を確保し、あとは全て塞ぎたいと言うことなのだろう。

それでは次に、この気軽に参詣し難い場所に孤立した神社を見舞いに行こう。





 移転により孤立した神社


 十字路の先には、まだ高速道路当時のままの路面がそのまま残されていた。
これこそ期待した光景であったので、私は嬉しかった。
自転車でこの路面を踏むことは、数年前まで考えられないことだったわけで、もしそんなことをすれば犯罪だった。

 だが、そういうことを考えながら“頭で味わう”感慨を除けば、この道の広さはチャリにとって手に(足に?)余る、それはもう連続する広場である。
だだっ広いのであって、道としては面白くも何ともない。




 東京方を振り返って撮影。

奥に見える橋が、旧道の入口に架かっていた堂之窪橋である。




 下り線の舗装を横切って、新旧高速の隙間に建つ神社へとたどり着く。 

そこは少し盛り土されていて、小さな丘となっている。その上に赤い小堂が鎮座する。



 お堂へ登る階段手前左側には木のベンチが、右側には水飲み場とブランコと、円柱を地面に並べたようなよく分からない静的な遊具がある。
これらは全て藪に隠されつつあり、設置者が期待しただろう子供の気配は無い。

 …わざわざ、薄暗い暗渠と急な階段を迷路のように結んで辿り着く、私が子供だったら喜々として戯れをしただろう”一本のルート”を用意したにもかかわらず、利用しているのは一部道路マニアや散歩のお年寄りだけのようだ。
新旧の高速に囲まれ、そもそも人家の群れからかなり離れたこの公園は、親たちにとっても、子供を安心して遊ばせられる場所ではないのかも知れない。

 高速の騒音もひどいしね…。




 細々とした無駄っぽい道がたくさんあるのが面白かったので、ここまで巡ったルートを着色してみた。
黄色い実線は、この神社へ来るための“正規参拝ルート”。同色の破線部は階段である。
次にオレンジ色の道は、各所にバリケードが置かれ封鎖されている道。わざわざ高速の付け替えに併せて新設した道ばかりだが、全く無用の長物となっていた。
赤い点線は共に、「相模湖16」の暗渠である。特に、右側の新道にある大きな暗渠は、先ほど見たとおりに行き先が無い、やはり無用の…。



 ちなみに、お堂の片隅に立派な、この神社の由緒を記した案内板が設置されていた。
思いっきり端折って説明すると、この神社は「白頭稲荷」といって、江戸時代の甲州街道に面した丘の上にあって旅人の安全を見守ってきたが、平成13年に高速道路の改築によって当地に遷座したとのことであった。
文は、「再び交通の神として道往く旅人にご加護あらむことを」と、結ばれている。

 人間の都合にどこまで神様が付き合ってくれるかは分からないが、確かにここは現在の高速も、そして使われなくなった高速も、両方いっぺんに見渡すことが出来る特別な場所なのであった。