国道16号 八王子バイパスの未供用ランプの謎 前編

公開日 2012.09.09
探索日 2007.04.04
および2012.08.23
所在地 東京都八王子市


自宅の“プラットホーム”から
いざ自転車を漕ぎ出し出発!

表題の物件を紹介するのであるが、その謎解きについては、まだ完全に解決したわけではない。

しかし、都内で交通量も沿道の人口も多い地域の話であるから、私がここで解けなかった謎を提示することによって、地元の方などから決定的な情報が寄せられるのではないか。
そんな期待を込めつつ、本編を公開することにした。
このレポートの最終回(考察編)では、私が解けなかった謎をまとめて書き出すので、ぜひとも皆様からの情報提供をお願いしたい。

なお、この物件は、私が2007年に東京都日野市に引っ越してきてすぐに発見した。
のらネコが縄張りを見回るように、私がアパートの周りを自転車でうろついていて、偶然に見つけたのだった。



八王子バイパスを自転車で堪能したい


2011/8/23 5:53 【現在地(マピオン)】

自宅を自転車で出発して15分くらいで、八王子市打越町にある国道16号八王子バイパスの打越ICに到着した。

八王子バイパスには無料の区間と有料の区間があるのだが、その境になっているのが打越ICで、同ICより南行き(横浜方面)は有料区間である。
八王子バイパスの有料区間は、日本道路公団が昭和60年に開通させた全長4.5kmの道で、多摩地区にお住まいの方にはお馴染みだと思う。
250円(普通車料金)が惜しい私などは、自動車では極力ここを避けて並行する一般道(国道16号現道)を通行するようにしているが、高い防音壁を唯一の友とする都市高速道路然としたマッシブな車窓は好きで、自転車でよくここを通る。

そう。
“緑の看板”がある道路なのに、自転車が通れるのである。

私も最初は驚いたのだが、この一見して高速道路然とした有料道路は、自転車を含む軽車両も、もちろん歩行者も、通行が可能である。
もっとも、ガードレールや植樹帯などで完全に歩者は分離されていて、車道部分は自動車専用の規制が掛かっているのだが、歩道部分が別の道でないことは、この先の料金所で自転車も料金(30円!)を徴収されることから、明らかである(歩行者は無料)。
歩道部分も間違いなく、国道16号八王子バイパスの一部なのだ。

…ということで、打越ICから“乗って”、横浜方面へ進む。
表題のものが現れるまでは、そう遠くない。



5:54 

打越ICで八王子バイパスに入って500m足らず、本線に合流してからの距離だけならわずか250mで、次のICが現れた。
中谷戸ICである。

有料道路上でちゃんと名前があって、緑看板でも案内される出入口として、これほど近接した例が他にあるのだろうか。
もしお暇なら、(車で)打越で乗って中谷戸で降りて見るといい。
笑えるくらいに一瞬しか本線を走らない。
なお、この区間は無料なので、ガソリン代以外はかからないです(笑)。

そして、自転車&歩行者組は、中谷戸ICで降りる意図の有る無しを問わず、強制的に一度降ろされる。
これは仕方がない。




中谷戸ICのランプウェイに沿った歩道部分には、こんな表示がある。

急 な 坂 道
自転車は降りて
通行して下さい

なんと! 自転車に対する個別攻撃。
しかも、私が一番大嫌いな「自転車は降りて」という指示。
さらに、ぱっと見では良く馴染んでいて、気が付かなかったのだが、

上の標識……。



自転車だし!!

実は爆笑した。ここで。


で、ひとしきり笑ったあとに気がついた。

この「スリップ注意」の標識が常日頃から陰口を叩かれている(と思う)、
「 このタイヤ痕は絶対に不可能だろ 」という問題が、
図案を自転車(などの2輪車)にすることで、いとも容易く解決してしまったのである。
2輪車ならば、少し頑張ってケツを振れば、こういうタイヤ痕をつけることは可能である。



…すまない。 

すこしだけ、下らなかったかな。



下らない!

大騒ぎするほどは、ぜんぜん下っていないのである!

急勾配なんて大嘘だ。
この程度の勾配で自転車を降りていたら、日本の道はとても自転車で走り回れないのである。
いや、本当に普通の坂道だから。
勾配5〜7%くらいだろうか。

…なぜ日本道路公団あらため中日本高速道路は、ここで自転車から降りるべきだと考えているのか、一度膝をつき合わせて伺ってみたいものだが、ともかくそう指示案内されているので仕方がない。

ああ。
おそらく開通以来私が最初だと思うが、私はこの坂道の終わりまで押して歩きましたよ!



ランプウェイを降りきると、車道部分は二手に分かれていて、直進すると再び本線に復帰し、右折することで「中谷戸」という場所へ行けると案内されている。

で、この辺りはまだ余談なのだが、この中谷戸ICというのは色々と謎めいているというか、イレギュラーな感じがあるICだ。
というのも、地図をいくら眺めてみても、辺りに中谷戸なんていう地名は見あたらない。
信じられないならば、この思いっきり拡大した地図(マピオン)を探してみると良い。

無いのである。

中谷戸という地名を案内されても、よほど特別な土地勘がある人でないと、理解不能なのではないか。
(中谷戸は昭和42年頃までの地形図には記載されていて、まさにこのICがある場所の字名だった)




もう少し、中谷戸ICの話をしたい。
この話は表題の物件とはおそらく無関係だが、もしかしたら、どこかで繋がっている可能性もあると思う。

左の図は、八王子バイパスの有料区間に全部で5つあるICがそれぞれ、どのように乗り降り可能であるかを示している。
起点と終点である相原ICと打越ICを除いた3つのICのうち、両方向の乗り降りが全て可能なフル規格インターは、中谷戸ICだけである。
残りの片倉ICと鑓水ICは、乗り降りが一方方向だけに制限されたハーフインターとして整備された。

ハーフインターよりもフルインターの方が利便性が高いのは間違いないが、交通量が申し分なく多い八王子バイパスにおいて中谷戸IC以外に実現しなかったのは、どうしてだろう。
これは大きな疑問である。

もちろん、各IC間の距離が一般の高速道路とは比べものにならないほどに短いので、ハーフICの不便さは我慢できるレベルだし、ランプウェイの建設が半分で済むので、建設費も土地の買収費もフルインターの半分になりうる。
地価が高い都会において、これは非常に大きなメリットだと思うが、それをハーフインター化の原因だとする公式見解を聞いたことはない。

八王子バイパスは、計画当初からハーフインターを多用する設計だったのだろうか? ……【疑問1】




フル規格で整備された中谷戸ICであるが、その実用性は、あまり高いとはいえない。

そもそも、この中谷戸ICで乗り降りしたことがあるというドライバーは、どのくらいいるだろう?
八王子バイパスの通行量は1日3万台前後だというが、1000台に1台も乗り降りしていないのではないかと思う。

なぜそう考えるかと言えば、右の地図を見ていただきたい。

中谷戸ICで降りた車が簡単に行ける場所は、旭ヶ丘団地という住宅地だけなのである。
一応狭い車道は三方へ延びていて、野猿街道、北野街道、片倉台団地方面へも抜けることは可能だが、どう考えても打越ICを利用した方が便利だし安全そうだ。
いくらフル規格のICでも、アクセス性が良いとか、ICの周辺に交通の大きな発生源があるとかでなければ、充分に利用されるはずがないのである。

中谷戸ICは、実質的には旭ヶ丘団地専用ICのようである。
このICの設置は、果して住民側が求めたものなのか、そうではないのか、興味深いところである。



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出現! 未供用のランプウェイ


中谷戸ICから“再び乗って”歩道を350m弱進むと、

見えてきた。


…私がずっと、気になり続けているものが。



5:58 【現在地(マピオン)】

これこれ、これだよ。

本線と歩道の間に、ガードレールによって画された未使用の一角が徐々に現れはじめ…

その広がり行く“余地”の先を追い掛けると……



使われていないランプウェイが!


使用を終えたものなのか、未使用なのか。
これについては、見た目の印象が全てだろう。
どう見ても、使われていた形跡が無い。

だが、作りとしては本格的で、管理施設の入口とか、そういうサブ的な感じではない。
明らかに、作ったは良いが使われていないIC(相模原方面への出口)のようである。

また、本線の反対側にも目を向けてみたが、向こうにはランプウェイは存在しなかった。
必ずしも出入口が本線に対して対称に存在するワケではない(中谷戸ICもそうだった)が、違和感はある。
そんな反対側のランプウェイも、土の法面を削ればスペースを捻出出来そうに見えたが…果して。



薄いフェンス1枚越しに存在する、おそらくは自動車専用道路(気持の中では高速道路)の一部として建設されたランプウェイに、私の心は捕らわれっぱなし。
頭の中に激しくわき起こるのは、様々な疑問だ。

このランプウェイは、なぜ使われていないのか。 ……【疑問2】
使わないのならば、なぜ建設されたのか。 ……【疑問3】
名前は何か予定されていたのだろうか。 ……【疑問4】
そして、もしも供用されていたとしたら、どのくらい便利で、どのくらい利用されていただろうか。

あったかも知れない道路風景を想像するのは、とても興奮する。

それにつけても、「八王子市街には直進して下さい」と、暗に「ここで降りても市街へは行けないよ」と宣言されている中谷戸ICは哀れだ。
そもそも、普通の高速道路ではIC番号が表示されている欄に、わざわざ「中谷戸」と書くセンスがよく分からない(なんか楽しいけど)。
すぐ上の本来のIC名の欄に、ちゃんと中谷戸って表示してるから、そこは空欄のママでもよくない?



未供用ランプウェイ沿いの歩道にも「自転車を降りて」云々という表示があったが、柵の向こうをゆっくり観察するには徒歩が一番なので、喜んで従った。

で、そのまま100mばかり登っていくと、未供用部分の終わりがやってきた。生きた車道のお出ましだ。

ここでランプウェイが一生懸命登っている間、本線の方は非常に緩やかに登ったに過ぎず、高低差がけっこう出来ている。
そして、ここからしばし…片倉ICまでの約1kmにわたって、本線は防音壁とコンクリート擁壁の間の深い掘り割りの中を孤独に突き進む、あたかも台地を貫流する河川のようになっている。

この区間の本線(すなわち掘割)の幅は18m(4車線分)だが、その左右それぞれに6mの側道(車道)+5mの緑地+5mの惻々道(歩道)を備えた(この写真の部分には緑地帯がまだない)、全幅50mキッカリの“大河川”である。

それが、北野台と片倉台という、大規模なニュータウンを分かって進むのである。



未供用区間に終止符を打ったのは、側道であった。

前述の通り、側道は本線(自専道)と惻々道(歩道)の間にあって、両側それぞれ一方通行である。

ここに架かっている橋は「片倉第5跨道橋」といい、この一方通行の側道が渡っている。
側道の北側の起点ということが出来る。
そしてもし未供用のランプウェイが開通していたら、この側道にすんなり合流する設計だった。

つまり、この側道がアクセスしている全てに対し、八王子バイパスはアクセス出来たということだ。
(もちろん、現在は直接アクセスが出来ないものだ)




この4〜5年の間で、フェンスの中のランプウェイに特に変化は無かった。

綺麗に砂利が敷かれ、あとは舗装を待つだけという完成度であるが、

昭和60年のバイパス開通当初から、ずっとここで眠っている。

今後、活用される可能性はあるのだろうか。 ……【疑問5】

これも“未成道”であるが、構造物としてはほとんど出来上がっているので、
どちらかというと“未供用施設”という表現の方がしっくり来る気がする。



側道を100m進むと、大きな十字路に出会った。

ここで平面交差(八王子バイパスの本線とは立体交差)する道は、
八王子市の都市計画道路(都計道)3.4.14号 長沼片倉線という。



この都計道長沼片倉線(計画幅員18m/4車線)は、
八王子バイパスと直交する東西方向の幹線で、
北野台、片倉台、みなみ野といった八王子を代表する新興住宅地を連絡する、
八王子市街の環状道路の南側を受け持つ重要な路線である。

未供用ランプウェイが開通したときに得られる最大の利便は、八王子方面からこの道へのアクセス性の向上だろう。
沿道の生活者にとって、多少の利便向上があったことは間違いないと思う。
(その程度の大きさは、軽率に断定的なことは言えないが)
また、みなみ野で接続する道路は、将来の国道20号八王子南バイパスであり、
数年後に高尾方面の現道接続地点までが開通すれば、この長沼片倉線の通過交通量は大幅に増大するだろう。


ただし、現状には八王子方面からのオフランプ(出口)しか見あたらないが、
やはり同方面へのオンランプ(入口)が無いと利便性は半減する。
それが(未供用でも)存在しないというのは、やはり一つの謎である。
建設の途中で何らかの計画変更があったと言うことなのだろうか。