岩手県道12号花巻大曲線 笹峠 再訪編

所在地 岩手県西和賀町
公開日 2011.10.9
探索日 2010.11.6

平成16年10月に探索した岩手・秋田県道12号花巻大曲線(主要地方道花巻大曲線)を覚えていらっしゃるだろうか。
いや、ほとんどの方が忘れていることだろう。
なにせ、もう7年も前のことだ。

そのときの探索レポート(全3回)


花巻大曲線は、路線名の通り岩手県の花巻と秋田県の大曲(現在の大仙市)を結ぶ、全長約90kmの長い主要地方道だ。
必然、途中のどこかで中央分水嶺である奥羽山脈を越えねばならないが、当路線では海抜620mの「笹峠」【位置】がその位置にある。

笹峠を越えて仙北郡と和賀郡を結ぶ道は、かつて荒川街道と呼ばれ、明治16年に元六郷町長の畠山久左右衛門らが2000円ほどの資金で切り拓いたとされる。
大変険しい道だったが、平和街道(横手〜北上、現在の国道107号)の近道として当初一定の利用があり、明治26年には、かの俳人正岡子規もここを越えて湯田温泉郷へ向かっている。

モータリゼーションの進展とともに、この山深い細道はすっかり忘れ去られていたが、秋田市が新産業都市の指定を受けた3年後の昭和43年、笹峠は主要地方道花巻大曲線の一部に指定され、翌年昭和44年には六郷町(現:美郷町)から沢内村(現:西和賀町)へ向け、全長25kmにも及ぶ脊梁越えの山岳道路が着工された。
長い工事の始まりだった。



工事ははじめ秋田県の単独事業として始められたが、11年後の昭和55年からは岩手県側でも着工した。

当初工事は順調に進んだらしく、平成の初頭にも全通する目論見だったというが、平成16年10月に探索を行った際には開通しておらず、峠の前後約3.5km(秋田県側約2km、岩手県側約1.5km)は、明治以来の旧道らしき道を辿って、なんとか完抜することが出来たのだった。




前回撮影した、秋田県側の新道風景。

黒森峠附近から笹峠を仰視する。

手前の矢印のあたりまでは、砂利道ながら、新道の道形が完成していた。



平成16年当時の県資料によると、笹峠に残された自動車交通不能区間は、
秋田県側が2030m、岩手県側が1460mで、合計3490mとなっていた。

写真は秋田県側の自動車交通不能区間で、工事用の小型重機が通行していたおかげで、
自転車でもそれなりに探索が出来たのだった。



古い堀割の笹峠を越えて、やがて古道は岩手県側新道の末端近くに下り着いた。

写真はその接点から見下ろした新道で、ちょうどここより奥(峠側)が工事中だった。
写真中央付近から奥が未舗装であることに注目して欲しい。



そして、こっからが今回久々の再訪を行った動機に関わる部分だが、

このとき岩手県側の現場では、さらなる延伸のための工事が続けられている様子が見て取れた。

おそらく“ラインの通りに”道が建設されていて、それは“矢印”の部分まで進んでいた。



末端部の拡大写真。
いままさに重機が山肌を削り、新たな道を作っているように見えた。

もっと現場に近付いて確かめたかったが、流石に工事中の現場であり、
この探索では、古道合流地点より奥にある新道の状況が謎として残った



今回の目的は、笹峠の岩手県側の新道末端部の調査だ。

全通したというニュースは寡聞にして聞いていないが、意外にひっそりと全通しているかも知れない。

昭和44年に着手された工事は、平成21年で40周年を迎えていて、探索時には41年目。

…いくら使ったか知らないが、いい加減開通しても良いだろう…。




西和賀町清水ヶ野 県道分岐点


2010/11/6 14:33 【現在地(マピオン)】

今回は、ちょっとしたスキマ時間に行った探索なので、行けるところは車で行こうと思う。
自転車で一度は走破しているので、心置きなくラクが出来る。

ここは西和賀町清水ヶ野で、笹峠へ向かう県道12号は、この交差点でで県道1号(盛岡横手線)から分岐する。

青看があるが(信号はない)、左折の県道12号の行き先は6年前と変わらず、峠の麓の集落(下前)と途中にある滝を案内していた。


…どうやら、未だ開通してないようだ。




左折すると、沿道にはほとんど家並みもなく、いきなり山の中へ入っていくように見える。

実際にもその通りなのだが、このまま笹峠の登りが始まるというわけではなく、2.5kmほど森を進んだあたりで森が開け、下前という小さな集落がある。
そこにはヘキサ(※これ以降特に断りのない限り、当レポートリンク先の画像は、自動的に平成16年探索時のものとする)もあるが、6年前との変化が見あたらなかったので、省略する。

なお、昭和55年に始まった県道の新設工事は、下前集落付近が起点であったが、その手前の道も将来の全通を見越してか、ほぼ完全に2車線化されていた。




14:38 【現在地(マピオン)】

県道分岐からちょうど5km進んだところが「白糸の滝」の分岐地点であり、県道はここを左折する。
6年前にはなかった大きな案内板が出来ていたが、その行き先は白糸の滝を示しており、左折の案内は一切無い。
(前あった工事案内板はどこかへ消えていた)
また、この左の草地に正岡子規の句碑がある。

現在地の標高は約300mで、まだ麓から100mほど登ったに過ぎないが、紅葉の鮮やかさが違って見えた。この様子だと、峠の付近はちょうど見頃かもしれない。
それだけに、冷たい雨が降り始めたのが、少々気がかりである。

左折するとすぐに冬期閉鎖用のゲートがあるが、これは開いていた。
例年12月上旬から4月下旬頃まで閉鎖されているようだ。





ゲートを合図に、あとは脇目を振らない峠の上り坂が始まる。

前回は自転車で駆け下ってきたので、微妙に既視感が薄い。
何も言われなければ、初めての道と思ったかも知れない。

いくらも登らないうちに、見慣れない案内板を見つけた。
長い直線登りの途中にあるので、否が応でも目立つ。


…なになに?

完全に嫌な予感しかしないが…




これより5km工事中につき
     通行止になっております。
大曲方面へはまだ開通しておりませんので
    別道路へお廻り下さい。
        御協力お願いします。
                 北上総合支局 土木部


…やっぱり。

そんなこったろうと思ったぜ…。

ん?

考えてみれば、ここから峠までは、どう考えても5kmもないぞ。せいぜい4kmくらいだ。
5km先だと、完全に秋田県側へ入っている計算になると思うが…?

全通はしていないにしても、6年前より相当奥まで工事が進んでいて、既に秋田県側まで入り込んでいるということか?
意外に頑張っちゃった?




これは、ちょっとだけ光明が見えてきたかも!…なのか?