静岡県道288号 大嵐佐久間線 第10回 &

 飯田線旧線 中部天竜〜大嵐間 第2回

公開日 2009. 7.24
探索日 2009. 1.25

今回のタイトル、  変  だよね…。


でも、出てきちゃうのである。


いよいよ、湖底に沈んだ飯田線旧線の“ある痕跡”が、今回のうちに出現してしまう。


そして、私が行った探索において、旧線の探索のための移動通路として「県道288号」を使っているので、両者のレポートは不可分であった。
そのためこんな「かっこわるい」タイトルになってしまったが、お許しいただきたい。



何はともあれ、「序」を含めて11回目となる「廃県道288号」の探索も、まだ3回目だがほとんど成果の上がっていない「飯田線旧線」の探索も、どちらも最後の区間に入ってきたのである。
右の地図に収まっている範囲が終われば、あとはほとんど「夏焼隧道」を残すのみだ。

ここまで回を重ねるたび、「廃線は未だか未だか」と繰り返し「コメント欄」にコメントを下さった貴方の心に届く発見があるとイイのだが…

とにかく…

「限界まで行く!」




 繰り返される落胆の果てに


2009/1/24 13:45

現在地は仮称「亀ノ甲峠」で、残距離は5.2kmほどだと前回の最後に示した。
そして、いくら私の下調べが甘いとはいえ、そのうちのラスト1.6kmほどは「廃道でない」事を知っていた。
そこには飯田線旧線を車道用に転用したという「夏焼隧道」があって、夏焼という集落の唯一のアクセスルートになっているらしいという事前知識を得ていたのだ。

すなわち、どんなに長くても、廃道はあと3.6kmほどだということになる。

逆にこれまで辿った距離は約13kmに及ぶが、このうち今のような廃道であったのは約4km。
すこぶる長いようでいて、距離としてはたいしたことがないような感じもする。それにも関わらず4kmで3時間も架かってしまったのは、自転車の故障も無関係ではないが、何よりも自転車が荷物としてしか機能しない道路状況の悪さに起因する。

近年まで県道として車を通していた事が疑わしいほどに多数の瓦礫を抱えた、満身創痍の廃県道288号。
既にその山場は越えているものと、そう信じたい午後2時前の私であった。(当初予定を大幅に超過していた)



満水時には全長30kmにも及び、日本最長級の人造湖となる佐久間湖であるが、最初に湖を見たときに直感した通り、この日の水位は相当に低かったようだ。
まだ全長の半分ほどを遡っただけにも関わらず、湖面はすっかりクリーム色となり、その両側には見る影もなく灰泥色に染まった湖底が広々と横たわるようになったのである。
もちろん、湖底が現れればそこに飯田線旧線の廃線跡が残っているはずで、いよいよ逃げも隠れも出来ない状況に近づきつつあると実感した。




特に湖底が広く露出しているのは対岸側で、そこにはこの写真に写っているような、何とも不思議な円形の陥没痕が散在していた。

地質学者ならば「これは○○現象だ」と明快な答えを出してくれそうだが、私にはただ妖しげな「マッドポケット」である。

そして、そのまま支線を此岸の直下に持ってくると…





……。


思わせぶりに大きめな写真も…。


駄目。

今回も駄目。

全然廃線跡らしきものは見えない。

或いはここは隧道である可能性もあるが、前後にもそれらしい物は見えず…。

こんなに水位が下がっていても、それでも現れないのか……。

正直、落胆の度合は深い。




13:57 【七本目の橋】

通算で7本目となる橋が現れた。(写真は振り返って撮影)

今度の橋も、一見してはその存在に気付きづらい小さな桟橋で、親柱や銘板は存在しない模様。
しかしかなり高い橋だ。
また、橋の前後はひどく落石が積もっていて、そのせいで事前の橋の存在を察知できなかったと言った方が正しい。




橋の欄干のアップ。

元々さして存在感のある欄干ではないが、大量の落石によって押し潰され、中の鉄筋で辛うじて保っている状態だ。
こういった定置の静物までことごとく破壊されている状況が、もはやこの道の復旧は永劫に無いと訴えているようだ。




橋から5分後。
相変わらずの状況でたいした距離は進めていないが、地形図からは存在を予期しなかった掘り割りが現れた。
本当に岩山を削っただけの荒削りな道路である。

今さら多少の崩壊の場面では驚かないが、どうやって支えられているのかが謎なくらい中空に張り出した大岩が、ひとり私の目を引いた。

だが、基本的に頭上に視線を泳がせていられるのは、そこに立ち止まって時間を浪費している時だけで、進むときにはとにかく足元である。
そうでなければ転倒しかねない。




あと3kmほどで廃道は終わりになるはず。
にもかかわらず、依然として道路状況には少しも改善したところが見られない。
廃道になってからはキロあたり1時間に近いようなノロノロペースなので、ちょっと不安も出てくる。

まさか日没までに脱出できないと言うことはないと思うが…。
この時期は、午後5時を過ぎればかなり暗くなる。




これまでずっと地面に注目して歩いてきた割にはほとんど見かけなかった「ゴミ」。
それがこの場所で何個かまとまって発見された。

しかも、その一つは初めて見る缶だった。
いかにも“ジュース風”だが、裏面を見るとサントリーのビールだという。
私はアルコール系にはとことん疎いので、全くピンと来ないが、これだけインパクトのあるデザインである。多分ご存じの方もいるだろう。(どういうコンセプトのビールなんだ?)




14:06 【現在地:謎の遺構】

久々のまとまった杉林だ。
さすがに杉林の中に「どうにもならないような崩壊箇所」がある可能性は低そうで、ちょっと気楽になる場面。
しかも、なにやら路肩に見たことのない「遺構」がある模様。

結局この遺構の正体は分からなかったが、

ここで湖面を見ると…




…近い。

近いうえに、下は入り江のようになっているらしく、すっかり水が引いて白い河原が見えている。

飯田線旧線…

これまで、湖畔へ実際に下りて確かめることは一度もしていないが、この杉林を上り下りすれば容易に近づくことが出来そうである。
たとえまだ湖底にあって何も見付けられないにしても、その事を確認することも意味はあるだろう。

よし、下りてみよう!







ぅあ!!






うわぁーーー!!

つ、つにい出た!!


つにい? ついに!!

もう言い逃れは出来ない! どう見てもこれは隧道だァー!




やっとである。

いままで既に5時間も並走しながら、ようやくその姿を見せてくれた飯田線旧線跡。

思わず浮かれてしまったが、この興奮は並ではない。
しかも、これはいつ来ても見られる場面ではないはず。
この低水位でなければ、見られない光景。

そして、いま“出てきたモノ”と水面の比高を見る限り、これが今回の水位で確認できる、最も南側の遺構だろうと思った。


…が。

さらに視線を南(左、下流方向)に向けると…





 …やべぇよ…。

いきなり楽園だよ……。


湖畔に下りてみたらばさ、いきなり楽園…!


隧道が、左右に2本現れやがッた!





まままずは、

この一番近くの隧道へ行ってみようか…!



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 喫水(生粋)の小隧道たち


14:13

飯田線旧線の隧道だ。

昭和11年、私鉄「三信鉄道」にあった176の隧道の一つとして生を受け、18年には国鉄飯田線のものとなるが、30年11月11日をもって佐久間ダム建設による路線付け替えのため廃止された。以来、水際を漂うこと54年目となる隧道である。

探索の時点では名前を知らず、また現地にもそれを示すようなものは何も見あたらなかった。

ただ、灰色の水涯線に同色の身体を横たえていたのである。
半身をゆらめく水明に委ねつつ…。




ちゃっぷん… ちゃっぷん…。

僅かな水の動きが洞内に反響して、坑門のすぐそばにいる私の耳に届く。

そして、水面すれすれに近づいて洞奥を覗き込めば、なんと隧道の出口が見えた。

明らかにこちら側よりも小さくなった外光が、月没のように見えたのである。

この事実は多くの情報を提供している。
つまり、隧道が貫通していると言うこと、長さは30mくらいであろうと言うこと、そして、こちらに向かって登り坂になっているであろうと言うこと。

そしてもう一つ。
向こう側の坑口も、探せば湖上にあるはずだと言うこと。




向こう側の坑口を探しに行こう。

かなり険しいが、隧道の短さを考えれば、行けないことはないだろう。

せっかく旧線を捉えたのだから、出来る限りの先端(水没先端)を確かめなければ気が済まないのである!


…だが、この行為は予想以上の危険を孕んだものとなった。

当たり前のことなのだろうが、水から出たり入ったりを繰り返している斜面は極めて脆くなっており、また頭上の廃道とは比較にならないほど膨大な瓦礫が積もっている。
一見動かなそうな巨大な岩も、体重を乗せるとズリッとすべったりして、なんとも頼りないのである。

慎重に慎重に、小さな尾根の天辺を目指した。




着いた…。
10mほど登っているが、なお草木の生えぬ満水位下の尾根上だ。

案の定、ここから見下ろすと、出口と思しきテラス状の張り出しが見えた。
だが、その前方には三方を崖に囲まれた青い水面が広がっており、「この先に陸路はない」状況だった。
また、“テラス”部分へ下ることも、危険すぎて断念した。
瓦礫の急斜面は入り込んだが最後、落ちる方向を制御できないまま湖水へ直行する恐れがあった。

しかそそれでも、苦労してここへ登ってきた一番の目的は、果たされた。






これこれ ↑

すなわち、

次の隧道だ。

次の隧道が、見えた。




そしてこの「次の隧道」は、

開口部が見えない水位だった。


つまり、今日のこの水位に限って言えば、これより先(南)に浮上している隧道は一切無い事になる。
飯田線旧線の勾配は、ほぼ河川勾配に従って北高南低になっているからだ。

何とも首尾に恵まれたことであるが、私は旧線が水面上に現れるその末端部に、ほぼピンポイントで出会えた事になるわけだ。

(なお、今回確認出来た中では南端のこの隧道だが、写真を見る限り、この北口は土砂に埋没している可能性が高いと思う)




瓦礫の尾根上から危険な斜面を戻ろうとすると、これから進むべき進路が視界に広がった。


そ こ に は !



隧道続出!!


…というのはイカスのだが……。






不幸 が同時に出現?!



え… え… え……?




大嵐駅起点まで あと.1km