中国山地第2位の高峰である氷ノ山(標高1510m)を主峰とする山系は、鳥取と兵庫の県境をなしながら北上し、扇ノ山(標高1310m)の高まりを作ってから、日本海へ向けて高度を下げていく。
この氷ノ山と扇ノ山の間を越えて、鳥取県若桜町(わかさちょう)と兵庫県新温泉町(しんおんせんちょう)を繋ぐのが、一般県道103号若桜湯村温泉線である。
……のであるが、
繋がってねぇ!!
……のである。(毎度毎度こんな道が出てくるねぇ)
しかもこの道、(前回のレポが“2ヶ所”だったのに対抗してというわけではないが)“3ヶ所”も繋がってない!!!
2ヶ所はまだしも、3ヶ所も不通なのは、流石に擁護不能であり、もはや県道として終わっているような気がするが、この県道の一部は既に体験済みである。
畑ヶ平林鉄霧ヶ滝線の探索時に、右図のAとBに挟まれている区間を走っている。県道をレポートしたわけではないが。
もしこの長大な路線(開通済みの区間だけで28kmくらいある)が全通すれば、中国山地では有数の高所ドライブを楽しめる良い山岳コースになりそうではあるが、その現実は果てしなく遠そうだ。最大の分断区間であるAには、一応林道が通じてはいるのだが、若桜町側は長年一般車を通していない。それで現状は細切れになっている。
一応、開通済みの各区間に生活道路の役割があり、交通量も皆無ではないようであるが…。
そして今回紹介するのは、右図の@の不通区間である。
この図のような小縮尺だと、とても短い区間に見えるが、大縮尺の地図で見てみると…… (↓)
本ッ当に短い不通区間である!
県道の色を塗られつつも徒歩道の表記になっている区間が、地図読みで僅か800mほど、紛れているのである。
そして、鳥取県公式サイト「とりネット」で公開されている通行規制情報一覧を見ると、2026年8月27日時点でも、この路線の「若桜町諸鹿」に「土砂崩落」を理由とする「通行止」が「平成25年4月5日」から現在まで継続していることになっている。
地図がないので、これが地形図に破線で描かれている区間を指していると断定は出来ないが、無関係とも思えない。
破線表記とはいえ、まるっきり道がないワケではないだろうから、車は無理でも、踏破は出来るのではないだろうか。
短い距離だし。
むしろ、こんな短い距離だけの不通区間は珍しいので、逆に興味深い。このくらい、開通させられなかったのか?
そんなわけで、探索してみたのが今回の記録である。
諸鹿(もろが)へGO!
諸鹿、モロにヤベ〜〜!!!
2021/4/23 11:43 《現在地》/海抜205m
国道29号を鳥取から姫路方向へ向けて運転中。若桜町中心部にて、県道103号を案内する青看を確認。
行き先に「諸鹿 7km」を表示していた。
このままクルマで諸鹿まで進むつもりで左折する。
なお、県道103号の起点はここではなく、この写真の交差点を右折して、すぐ突き当たる旧国道をさらに左折して間もなくある若桜駅前の丁字路(県道176号若桜停車場線交点)である。
11:44
左折して県道103号へ入るとすぐに八東川を渡り、1kmも走らぬうちに再び青看が出現。
「諸鹿 6km 来見野 4km」の隣に、さっそく、きな臭いものが掲げられていた。
「予告 諸鹿から2km先〜広留野 車両通行不可能 ※広留野方面へは八頭町妻鹿野経由(町道・農道)を利用してください」
だそうで。
さっそく注文多いね。うれしくなるよ!
私自身、土地鑑がぜんっぜんなかったので、この青看に書かれていた内容をすぐには読み込めなかったから、地図と照らし合わせて確認したところ、「広留野(ひろどめの)」へは上図に青線で示したようなコースで行けという内容だった。
行く方法がないよりはマシなんだが、結構な迂回である。
(もしストレートに県道103号が通れたら11kmのところ、+5kmの16kmを要する迂回コースだ)
まあ、私は迂回なんてしないが、この時点で、それ専用の青看が掲げられるレベルで「車両通行不可能」であることが、はっきりした。
たとえ距離は短くても、侮れないかもしれないな。
覚悟を決めて、アクセル・ホーク!
11:46
さらに1kmくらい進むと、県道103号のヘキサが初めて現れた。
それと同時に、事前予告通行規制区間の案内も来た。
ここから5kmの区間は、豪雨・豪雪時に通行止になるらしい。具体的な規制値が書いていないので、結構大雑把だな。
5kmってことは、諸鹿集落までの残り全部だろう。
諸鹿はこの道でしか外界と繋がっていないので、これが生命線である。
11:51
順調順調。
最初に青看で恐がらされたが、道自体は2車線をキープしたまま来見野川の谷間を快調に進んでいく。
来見野という小さな集落もサクッと抜けて、諸鹿集落の入口に迫ったあたりで、ご覧の青看再び登場。
ここで迂回を言われても、今走ってきた分を全部手放せってことであり、結構きつい。
それはともかく、無事に諸鹿へ辿り着いたので、
ここで車から降り、いつもの自転車へ乗り換えた。
12:05 《現在地》/海抜370m
乗り換え後500mくらい走って、諸鹿のバス停がある集落中ほどへ到達。
谷間に収まった、コンパクトで凝集感のある集落だ。道が広いお陰か明るい感じ。
とりあえずノー予備知識なんで、この集落のコトはさっき「もろが」という呼び方を青看で初めて知ったくらいに知らないが、いま辿ってきた来見野川沿いの現住最奥集落であることは分かる。だって路線バスの終点だもの。
この先の道のことを調べる段階では、きっと諸鹿のことはもっと知る必要があるだろうが、とりあえずこのまま先へ進んでみるぞ。
うわ!なにこのムラ!
背中にヤベぇもん背負ってやがるッ!!
慌てて【地図】
を見直すと、確かにある。 崖が。 屏風岩 って言うらしい。
屏風岩と呼ばれる岩を飽きるほど見てきたが、トップクラスに、まじもんの屏風。モロだぜ。
これって、
悲報? 朗報? どっちなの?!
…………どっちでしょうねぇ……。
屏風岩の下を潜り抜けて奥地へ
2021/4/23 12:08 《現在地》/海抜370m
前回最後のシーンを少し補足する。
自転車に乗り換えて【諸鹿バス停前】
に辿り着いた私は、県道が左の広い道であることは分かっていたが、いかにも生活道路らしき直進の細い道が気になったので、寄り道を敢行した。
そうすると、車1台がようやく通れる、大きな車は軒に擦ってしまいそうな狭路の奥に、1本の橋が現れた。
橋は来見野川に架かっており、諸鹿橋、昭和48年竣工の銘板があった。
地図を見ても、諸鹿の集落は川の両岸に同じくらいの数の人家が集在しており、これが対岸への唯一の橋だった。
対岸の家並みが背にしている、巨大な鉄のカーテンを思わせる落石防護フェンスが印象的だった。
……近づいては見なかったが。
興味を持ったのに、なぜ近づかなかったかと言えば――
橋の上から何気なく当然の行為として見た上流に、
県道がある右岸の家並みが直ちに背にしているように見えるくらい間近に、驚くほどに高く巨大な岩壁が、そそり立っていたからである。
これが、前回最後の場面だ。
これを見た時点で、私は対岸への寄り道というアイデアを忘れて、すぐに県道の続きへ復するための転回をしていたのだった。
で、改めてバス停前から県道へ進行すると、名前からして村の総鎮守らしき【諸鹿神社】
を通って、あっという間に集落出口へ。
12:11
諸鹿神社の脇というか、裏にある集落出口の場面。
諸鹿へ近づくまでの運転中、【青看で2回も予告】
されていた渓谷を、私は忘れてはいない。
「諸鹿から2km先〜広留野 車両通行不可能」と書いてあった。
絶対に諸鹿から2kmも来てないのに、「落石のため通行止」の告知と、実力行使の“半バリケード”が設置されていた!!
諸鹿の先であれば、2kmだろうが、ここだろうが、大勢に影響はないというハラかもしれないが、青看の裏切りである。
半バリケードなんで、ここが本当の封鎖地点ではない、予備的なものなのだろうか…?
ちなみに、ストビューは大事を取って? ここまでしか撮影はしていない。
傍らでは、珍しいビックリマークの警戒標識「その他の危険」も警告している。
具体的危険の内容は「なだれ注意」であるらしいが、それ以外も明らかに注意しなければならなそうな“背景”が見えている……。
つうか、マジでそこ進むんだ、県道。
地図通りではあるのだが、「屏風岩」の注記がなされている岩場の真下へと、道は臆せず進んでいる。
屏風岩の地図上での規模は、崖記号で表現されている部分だけで横幅400m以上、落差は計曲線を2本噛んでいるから100m以上という、集落間近にある崖記号としては稀な規模である。
RPGの終盤で訪れる村を地形図で表現すれば、こんな感じになりそうだが……。
で、RPGなら岩壁の上に中ボスの魔物が居を構えてるのが定番だが、今回私が目指すゴールも岩壁の上である。
岩壁上にある広留野の村まで行きたい。
もちろん私は道に沿って行くけれどもね!
倒木が、完全に路上から撤去されていないな…。
1車線分の通行スペースは確保されているので、通行に支障はないが、急に整備状態が怪しくなった。
道幅そのものも、諸鹿までは2車線だったが、今は1.5車線である。
12:13
屏風岩の真下へ迷わず突入していく道。
一応、道と崖の間には崖錐斜面が相当量あって、直接に接しているわけではないが、それでも見上げる迫力には圧倒された。
ここはそれほど有名ではないと思うが、この屏風岩は有名な信州の美ヶ原と同じタイプの溶岩台地の地形らしい。
扇ノ山が噴出した安山岩の溶岩が、来見野川によって長い年月をかけて浸食され、この絶壁と高低差を造った。
広留野は溶岩流の上にある溶岩台地ということになる。
これから為されねばならない県道の仕事は、河床からの落差が300mもあるこの溶岩台地を登ることであった。
だからなんで倒木が除去されてないんだよ?笑
ここなんて、倒れたスギに電柱や電線が巻き込まれていて、多分断線していると思う。
探索日(2021年4月23日)の直近で、何かあったのか? 大きな雪害や風害が。雪っぽいよなこれは。
躍り出た! 崖の下、崖錐に接する路上へ。
直下から見上げると、こんな風に見えるのだな。もっとも、全部が見えているわけではなさそうだが。
過去にはここを攀じ登った人とかも、きっと居るんだろう。ある種の挑戦心を駆り立てる姿をしている。
ならば、県道はどうやってこの落差を乗り越えようとしているのか、お手並み拝見である。(手並みが下手だから、未開通なんでは…)
12:14
県道は特に覆道のような防護構造物を設けずに、崖錐斜面と来見野川の間をすり抜けている。
それでも落石に対するバッファーゾーンが山側に設定されていて、盛り土が行われていた。
実際、散らばっている落石(とみられる岩石)のほとんどは、このバッファー上に散らばっているので、十分に効果的な対策になっているようだが、稀に、活きの良い落石もあるようで、数個ほど路上にも散らばっていた。直撃したら死ぬ大きさのヤツが、数個。
この程度の確率は、通過するだけなら気にもしないが、絶対に駐車したいとは思わない場所である。
だから倒木よ。
さっきから落石以上に道路に支障してるぞ。
何があったんだ。
やっぱり――
――犯人はユキ。
なんだろうな、やはり。
周囲には全然ないのに、ここだけに残雪があった。
【なだれ注意】
は、伊達ではない様子。
鳥取は西日本の暖かいイメージとは裏腹に、日本海側の気候で割とごっそり雪が積もる。若桜町は豪雪地帯対策特別措置法に基づく「豪雪地帯」の指定も受けている。ましてここは標高400mを超えている。
しかし、思いのほかに酷いな。
倒木がないところでも、電柱がこんなことになっていた。
これが一冬だけの破壊なのか、何年分も放置された結果なのかは分からないが…。
とりあえず、半バリケードで封鎖してあったことが肯ける道路状況だった。
そして、道はまああまり無事ではなかったが、私自身は何も苦労することなく、屏風岩直下の400mほどの区間を通り抜けることが出来て――
12:18
――先へ進むと、思いがけず1台の車が路上駐車しているではないか。
放置車両ではなさそうだが、半バリケードを越えてきた猛者がいたか。
それだけじゃないな。 何か…青い……、青看っぽいものがある。
「若桜湯村温泉線 県管理終点」「この先」
そう書かれた、おそらく鳥取県が独自に立てた案内板だった。
ここまでは間違いなく県道である事は分かるが、「この先」はどうなんだろう?
ここが県管理区間の終点なのか、「この先」のどこかに終点があるという意味なのか。
とりあえず、地図はまだずっと先まで県道として描いているし、目に見える道の様子も、まだ変化はなさそう。
傍らに落ちて死んでいた「この先通行不能」
の看板も気になるところだ。
そして、ここにはもう一つ気になるものが。
12:20
ここから山へ入っていく歩道がある。
地形図にも徒歩道として描かれている道で、屏風岩の東側にある相当急傾斜な尾根の300m近い高低差をわずか500mほどで上りつめて、この県道の続きである広留野の入口辺りまでショートカットしている。
普通に県道を行くと、地図読みで3.3kmある道のりを500mに短縮できる、スーパー短絡路である。
まさかとは思うが、停めてある車は、広留野の住人の通勤用とか?
……いや、これはただの思いつき。 さすがにな。
でも、私の今日の探索においても、重要な用途がある道であった。
その重要な短絡路の入口を確認でき、さらに――
その道が「中国自然歩道」として、整備を受けていることが判明した。
これは安心感がある。
ネタバレにもならないだろうから書くが、私の探索プランは、県道で広留野を目指し、その後にこの短絡歩道で戻ってくる。この周回であった。
だから、この絶対に急傾斜に違いない下山路が、信頼のできる国が整備した「中国自然歩道」であることは、ありがたい差し入れだった。
停めてある車の主は、ハイカーかな?
うん…… そう。
…………
……とりえず、 “身軽になっていく必要がある” と、私は解釈したぞ。
「自転車、お前もう船降りろ。」