道路レポート 鳥取県道・兵庫県道103号若桜湯村温泉線 諸鹿不通区 第3回

所在地 鳥取県若桜町
探索日 2021.04.23
公開日 2026.09.04

 バリケードの先に伸びる無人ロード


2021/4/23 13:51 《現在地》/海抜520m 

ついに現れた、【半バリケード】ではない、おそらく全面バリケードを企図したであろう封鎖。
……なんだが、微妙に車1台ギリギリ通り抜けられるくらいの隙間が、山側にある。
どういう意図かは分からないし、道路管理者が意図した隙間でもない気がするが…。

そして、このようにバリケードで封鎖され、加えて看板で明確に「県管理終点」も宣言されたわけであるが、バリケードの向こうにも道は続いている。
地図にもそのように描かれているし、先ほどまで何度か見上げた“上段の段”も全てこの先である。

この先の道の正体は、なんだろうか?
建設したが、供用されていない、いわゆる未成道なのか。
それとも、1度は車道として供用したが、災害などの理由で長期間封鎖されるに至った区間なのか。
その見定めを、これから直に行っていこう。



なんかラミネ加工されたA4紙がバリケードにひっつけてあった。
当然読む。

……なになに……   ふむ。

これは「国有林貸付標」の表示らしい。
国有林の土地を道路用地として9877平方メートル分だけ県へ貸与するよという内容。
貸し付けの開始が平成16年4月1日で、それから何度か更新されてきたらしく、今期は平成30年から令和5年までだそう。
探索時点ではまだ猶予があったが、これを書いている現時点では期限切れてるな。更新されているとは思うが。

ポイントになりそうなのは、「貸付地はきれいに、標識は大切にしよう。」という教え……ではなく、開始が平成16年であることだろう。
見た目に新しそうな道だと思っていたが、たぶんこの区間の道が概成したのが、平成16(2004)年なんだろうな。
探索時点では、それから17年が経過していたわけである。

早くも “未成道説” がぶっちぎってきたな!!



鳥取のフェアモント・ヘアピンに別れを告げて、“上段”へ突入する!

……にしても、こうして全体を俯瞰してみると、随分と歪な形をしたヘアピンカーブだった。
ヘアピンでもない気がする。なんだ? ホッチキスの針?
いずれにしても、ここがレースコースだったら超絶テクニカルコーナーだな。コースアウト多発しまくりそう。
この歪さも、私が勝手に疑っている、工事途中の無理矢理コストダウンの影響だったり?



13:52


うむ。


もう未成道で確定だろこれ。

この真っ新なままで土をかぶり始めた道の感じは、もう明らかに見慣れまくった未成道のそれだった。

道の規格自体は、さっきまでの下段と変わっていないと思うが、やはり、「県管理区間終了」を言明されている影響は絶大だ。
刈払いも、路上清掃も、何年もされないまま放置されているのだろう。
それなりに“良い道”が、台無しになり始める、その一歩目を歩いている感じ。まだまだ修復は簡単そう。



道は再びスギ林へ。
とはいえ、ちょうど道路の高さが造林地の上限線で、法面の上は自然林だ。
お陰で、下段で面倒だったスギの倒木や落枝がないので、むしろこっちの方が歩き易い。

ガードレール越しに見下ろすと、ちゃんとさっき歩いた道が見えた。
“古道らしき”も見えたが、そういえば上段に入った時点では並走していた“古道らしき”は、いまは見えなくなった。
法面に切り取られているのか、あるいは路面に重なっているかだろうな。



14:00

良い登り方、してるじゃねーかぁ……。
なかなかの勾配っぷりで、がんばって登っている。

そりゃあ、そうなるよな。
この県道は諸鹿から300mも高い広留野の溶岩台地へ登るのが当面の目的であるとはいえ、最終の目的は、扇ノ山の県境稜線越えだったのだ。
その必要高度は、長大トンネルを造らない限りは1000m越えである。
ここでまだ標高500mちょっとだから、ぜんぜん登り足りない。



地形は、急速に険しさを増している。

しかし、地形に“絞られて”も、道幅を死守している。
法面工や路肩工を高くして、ようするにコスト高の道路にして、耐えている。
だがそれだけでは耐えきれず、代償のように、ぐねぐねぐねぐねぐね……とブラインドカーブが続く。
未供用だからかもしれないが、道路標識もカーブミラーもないから、余計にグネグネ“だけ”が目立つ。

そんな寂しい道に、バリケードの隙間から入り込んだ少数の車の轍が花を添えて?いる。
この轍が嫌に目立つのも、いわゆる未成道路面の特徴だ。
ほとんど車が入らない平らな路面には、一見目立たない地衣類や埃などが堆積していて、重量があるタイヤで踏むと痕が残るのである。
普段使われている路面や、使い古されて凸凹している路面だとこうならない。



14:02

バリケード地点から約10分歩いた。
40分前は来見野川の谷底にいたのに、もう十分に山上と言える高度感を獲得した。

まだ、道は頑張って伸びている。
普通に考えれば、地形図の道が“徒歩道”表記に落ちる地点で、この“車道”は終わりそうだが、ワンチャン何かの間違いでこのまま車道が上まで続いていたら面白いなと思った。
あのバリケードの隙間を縫って入り込んだ人だけが、こっそり上まで往来できているとかだと、夢がある。
たまには、本当に偶にくらいは、そんな道路の隙間が実際に役立つケースがあってもよい気がしないか? 
だいたいバリケードの先で、ポジティブに裏切られた経験がない…。

そんなことなどを好き勝手に考えながら歩いていた(カメラにボイスが入っていた)。



14:04 《現在地》

ああ…… だめそうですね。

バリケードから500m進み、地形図上の“車道”が残り100mとなったところで、遂に、異変が。

道自体は続いているように見えるが、鋪装が終わるらしい。

と、同時に、交通量ほぼ皆無の化けの皮が剥げる。

灌木の藪が……



14:05

完全に、クルマは無理になってしまった。

歩いては、行けるけれども……。

道形は概成したが、鋪装をする前に工事を止めた感じ。まさに未成道。



と、思ったのも束の間で――




14:08 《現在地》/海抜570m

地形図、完全に正しい。

地形図の道が車道から徒歩道へ“堕ちる”タイミングで、ぴったり車道が終わっていた。

どうもこの先はまたスギの造林地らしいが、きっぱりと終わってるなぁ…。ここも国有林なら、買収失敗はなさそうだが…。



結局、バリケードから600mの地点で、車道は“ちゃんと”終わっていた。

やっぱり、車道は完成していなかったし、繋がっていなかった。
でも、地形図だとこの先の点線区間は短い。地図読みで800mほどに過ぎない。
歩ける道さえあれば、30分も掛かるまいと思う距離。
もちろん、踏破するつもりで来ている。



山の中腹、それ以外の表現が見つけられない、えらく中途半端なところで終わってしまった。
単なる予算の問題なのか、政治的ないざこざか、災害か、自然保護か、それらの複合か、はたまた全く未知の原因か。
今のところ、未成の原因が読み取れるような要素は、ないと思う。


……ともかく、先へ進まなければな。

どうやって?




ここですか?

……ゲーニッツの口まねをしてみたが、山からの反応は無し。

でも、ここだろうなぁ……

わざわざ路面の高さに、法面工の犬走りがあるなんて、偶然じゃないだろ?

狭いけど、堕ちたら危なそうだけど…、 ここ、行きますね。



 道づくりの巧み


14:17 《現在地》/海抜570m

国道29号の入口からちょうど10kmの地点まで引っ張ってきた県道だったが、遂に終わってしまった。
とはいえ、地図上ではちょうどこの地点から、「徒歩道」表現の道が、県道の色を引き継いで先へ伸びている。
その道が実在することを信じて、車道の末端に別れを告げ――



――こんな道かどうかも定かでない(たぶん道ではない)犬走り(だから犬走りだって)に未来を託す決断を下したのだった。

だって、これしか先へ行く道はないように見えたし……。

しかしこれは冷静に考えれば、徹頭徹尾、法面中腹の犬走りでしかなかった。

そして、もはやどうでもいいが(いやいや道路管理者的にはどうでも良くない)、法面施工を地盤に強く押しつけて固定するために打設されたアンカーボルト(グラウンドアンカーという)の先端を保護する金属キャップが外れているのを見つけてしまった。これはつまり、故障か施工不良かは分からないが、このアンカーボルトは地盤にちゃんと固定されていないのである。(←だったらどうでも良くないだろ)



14:19

ん? あれは最近行方知れずだった“古道”の続きではッ?!

犬走りを走りきっても、その先には一切の道形が存在しないことが認識されるのとほぼ同時に、私は犬走りの下のスギ林に、一本の細い道形が存在することを発見した!
それは、スギ植林地を黙々とトラバースしている雰囲気が、下段で一度歩いてみたあの“古道らしき道”とよく似ている感じがした。

しかも、改めてここからよく観察すると――



道路末端からそこへ降りていく階段があるではないか!

……まあ、灌木が普通に階段を無視しして繁っていて、ぜんぜん使われている様子は全然無いけれど……。
それでも、ここまでの道と、この先の道が、繋がっているべき1本の道だという道路管理者側の認識が読み取れたことに、大きな意味がある。(それしか意味がないとも言える状況)

進路変更。 降りてみる!



14:23

降りてきたでよ!

これまでの道よりも10mくらい低い位置である。
今は未成道に終わっている道路が、将来延伸する時が来れば、今いるこの場所は路面の下に埋没することになるだろう。
ここにある、古道とみられる道形と共に。
というか、ここまでの区間もそうだったのだ。だからしばらく古道が見つからなかったのだ。

そして、改めて進行方向へ目を向けてみれば――



やっぱり道の続きだ!

バッチリ道形があった。犬走りの上から見えたのは間違いなくこれである。

よっしゃ! 行くぞぉ〜!!



14:26 《現在地》/海抜560m

幅2〜3mの案外と広い道形だ。

とはいえ、外観的にも、状況的にも、いわゆる自動車道を最初から企図して造った道ではないと思う。
コンクリートと鉄ではなく、土と石の時代の道。馬車とか荷車とかを念頭に置いた、いわゆる近代車道に属するものだと思われる。(古道と表現してきたが、そもそも近世以前の古道とは思っていない)

そしてその範疇の中では、広い道だと思う。
それこそ頑張ればオート三輪とかの小さな自動車も通れる道幅だ。
ちゃんと整備されていたら、現代の軽自動車も通れそうだが、もちろんそんな様子はない。

こんな前時代的で遺跡めいた道路だが、どう見てもまだ新しそうな用地杭?が刺さっていた。
ここに「鳥取県」とでも刻まれていたら、ほぼ県道の証しだぁ〜〜! と小躍りしたに違いないが、何も書いてはいなかった。
それはそれで、意図不明で気になるが。



謎の標柱地点から振り返り。
まだ車道の末端から、これしか進んでいない。
見ての通り、10mからの段差があるのだが、地形図ではただ車道から徒歩道に状態が変わっただけで、同じ県道の続きとして表現されている。

実際の県道としての供用状況は、【県管理終点】を過ぎている以上、未供用区間ということになるのだろうが、道路区域が決定済かどうかは、ちょっと分からない。それこそ、県の用地杭があったら、決定済と判断したと思うが。



14:26

うむ。
これは自転車を持ち込まなくて結果的に正解だったっぽいな。
地形図上の非車道区間が短い(約800m)からと安易に自転車を持ち込んでいたら、最終的に通れたかどうかはともかく、この場面で相当にヒヤヒヤされられただろう。
初っ端からこれでは、自転車的に先が思いやられすぎるのである。

でも徒歩なら、鼻唄交じりである。 さっきまでの道との急転直下が、たのしいぞ。
素性がはっきりしないままで歩いているのも、スリリングで面白い。



14:27

うおっ! いいよっ!! 素朴な石垣ある!!

人工林ではなさそうな広葉樹の明るい雰囲気もいいね。

険しそうなのも、そそる!

これはなかなか良い道を見つけた気がする。



14:28 

あ、標柱またあった。
「一〇四」の文字プレートだけがはめ込まれていた。
この文字の有無以外は、さっきのと同じ標柱だ。

おそらくこれは国有林絡みの標柱だと思う。
道路沿いに複数あるということは、【国有林野貸し付け】絡みかと思う。
この標柱を結ぶ位置が貸し付けの対象になっているのではないだろうか。



14:29 

崖を横断する石垣の続く道! 良き!

地形は険しいが、道路の勾配はとても緩やかだ。
車道であらんとする強い意志を感じる。
それも、非力なクルマが想定されているのだろう。人力や畜力の。



この石積みのある古びた道が、県道として両側から途中まで整備が進められた道の原型だ。
そしておそらくここも県道ではあるのだろう、未供用の。

この前時代の車道が、来見野川の底から広留野の台地上まで繋がっていたのだろう。
その全線を現代のレベルに改良することが、県道の使命として目指されているに違いないが、おそらく平成16年頃に最後の工事が行われたまま長期間止まっている。理由は分からない。地図上では、開通まで“あと少し”に見えるのだが、それでも一息に完成できなかった理由があるのだろう。



14:32 

長い石垣のトラバースを抜けると、前方にまたスギの造林地が見えてきた。
しかし、相変わらず斜面の傾斜がとても強い。
よくぞ管理されていると思う。



14:34〜14:38

ちょうど道の高さが造林地の上端になっている。
綺麗に下枝を払われたスギの森は遠くまで視線が通る。
だから、ずっと下にある県道の路面やガードレールまで見通すことが出来た。
直線距離で200m、高低差は130mくらいある。普通は樹林帯越しに見通せる距離ではない。

「俺がここから見ているぞ」という謎の優越感を胸に、おそらく誰も現れないだろう県道を見下ろしながら小休止。菓子パンを食った。



行動再開。

樹林が旺盛に繁っていて、遠目にはそれと分かりづらいが、実際は崖のような地形である。
諸鹿集落の背後に聳える屏風岩の片鱗が、ここにもある。
扇ノ山が吐き出した極厚の溶岩流を来見野川が削り切った広留野溶岩台地の崖壁が、台地の南側を取り囲むように連なっている。

チェンジ後の画像は、路上からその崖のような斜面を見上げている。
ちょうどこの道がある高さを境に、その上方がことごとく険しかった。
というか、険しい場所を避けられるギリギリの上端に道を通したのであろう。

道づくりの古き巧みを感じた。

巧みは、険しさを上手くいなしながら、“己の目的”を果たすことに長けている。

ここでの目的は、台地の上まで道を連れて行くこと。




この上の崖に石垣の道がある!!

なぜかある!

地図にはこんな線形無かったと思い、GPSの画面を確認してみると――



地図に無かったのは、むしろ俺(今いる場所)の方だった!

「え? 俺ってもう死んでたの?!」ってなる亡霊の姿は創作でよく見るが、私がそうなっていた。

でも、ここに来るまで分岐なんて無かったぞ?! どどどどういうことだ?!?!






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